第21章 企み秘めたる結婚式
翌朝、ホテルに泊まった皆と空港に向かう。
そこで待っていたのは、何故かきとりちゃんだけで。
その手には、ブーケが握られていた。
1人なのが気になって、黒尾さんの姿を探そうと辺りを見回す。
「クロ、やっぱり私のトコには泊まりたく無かったみたい。これだけ置いて、どっか行っちゃったのよね。」
答えは音声で聞こえて、発信源に目を向けると、笑っていた。
それは、苦笑という感じでは無い。
今はまだ、その時ではない。
だけど、擦れ違い続ける2人を見ているのは嫌だから、この笑い方を見ていて安心した。
少しして、黒尾さんが空港に到着する。
真っ先に気付いたのはきとりちゃんで。
「クロ、まるごと置いてったらお裾分けじゃないでしょ。」
黒尾さんの胸元に、ブーケを返した。
きとりちゃんは、馬鹿じゃない。
黒尾さんが、ブーケ置いていった意味を考えない訳はない。
普段の言動からして、からかいがてらやった事だと思っても、その反応を見ずに家から出たなら、そうじゃなかったのくらい分かっている筈だ。
きとりちゃんは、きっと。
ベゴニアの花言葉を知って、黒尾さんに渡しに来たんだ。
『片想い』をしているのだと。
それを、伝える為に…。