第19章 たまには女子だけで
コードを引く。
きとりちゃんのシャツが内側から引っ張られて、袖が捲れた。
その捲れた方の手を掴んで、袖口を見ると中からマイクらしいものが見えている。
「きとりちゃん。」
「あ、ははっ、は…。」
白状させようと定番の笑顔で威嚇した。
今更、笑って誤魔化そうとしても無駄だ。
慣れないけど、怒鳴ってやろうと息を吸い込んだけど。
「…今日はだから女子会って。え?もう家の前?」
声にする前に、通話中のみつの声が聞こえて、ただ息だけを吐き出して終わる。
すぐにインターフォンの音が聞こえて、玄関に急いだ。
開ける前に扉が開いて、現れたのは昨日も来た面々。
「みつは、リビング?」
一番最初に口を開いたのは赤葦さん。
視線だけで、人を殺せそうなくらい怖い顔をしている。
私が答える前に上がって、早足でリビングの中に入っていった。
「取り敢えず、皆さんも中へどうぞ。」
こんな大勢を玄関に立たせておく訳にはいかず、中へ促す。
ぞろぞろと揃って歩き、リビングに入ろうとした時、逆に出てきた人が居た。
赤葦さんと、その人に頭を掴まれたみつ。
「痛いって!なんで、こんな事するの?」
「お前、怒られるような事をした覚え、ない?」
「…あります。」
みつの酔いは、すでに醒めたようで、顔から血の気が引く。
「りら、俺はコレ、連れて帰るから。」
「…はい、お疲れ様です。」
赤葦さんは人の妹を物扱いして、さっさと退散していった。