第16章 複雑に絡む
あんな軽率な事を言わなければ良かった、と。
店に着いた途端に後悔する事になる。
元々は、木兎さんが仕事関係の人達と利用していたのが、この店だ。
だから、予約といえば、そっち関係だと思ってしまった。
最近は、皆で集まる時にも、ここを利用している事を失念していた。
つまり、本日のご予約は、私の知り合いでもある皆様とのもので。
そこには、黒尾さんも、月島くんも含まれている。
今からでも、りんさんに黒尾さんが来る事を話して、止めて貰った方がいいんじゃないか。
そう連絡しようと、スマホを取り出したけど。
すでに、もう家を出たとのメッセージが入っていた。
それでも連絡をしようか考えていると、木兎さんと、赤葦さん、みつが到着する。
ドリンクなんかの注文をこなしている内に、他のお客さんも入ってきたから、そんな暇は無くなってしまった。
小上がりに居る木兎さん達と、カウンターの端に席を取ったりんさん。
さっきは追い出した、気に食わないみつが居るのもあるし、あまり絡まらないでいてくれる事を期待する。
数分後、黒尾さん達より早く来店したりんさんは、木兎さんに挨拶をしただけで済ませてくれて安堵した。
何でも、他の人と約束しているのに自分が入り込むのは悪いと思ったらしい。
空気の読める人で良かった。
なんて、思ったのも束の間。
カウンターが埋まっているのに、1名のお客さんが入ってきて、お断りしようとしたところで。
「りんちゃんだったか?こっち来いよ。どーせ、ダチしか来ねーんだから。そしたら、席空くだろ?」
私の心情としては、有難くない提案がりんさんに向けられている。
先程のように、りんさんが遠慮してくれれば良かったのだけど。
誘われたなら、同席しても良いと判断をされてしまって、移動してしまった。