第15章 Waiting for you
当たり前になったのは一番乗りすることだけじゃないんだよね。
俺が荷物を置いて座ると智くんは立ち上がった。
トコトコと歩いてくるとポスンと俺の隣に座る。
嵐の楽屋は座る位置が自然と決まってる。
それなのに智くんが一番乗りするようになってから俺の隣は智くんの定位置になった。
俺としては嬉しいよ?マイナスイオンがより近くに感じられて。
でもなんで他のメンバーはその事を自然に受け入れているんだろう?
誰かしら疑問を口にしてもいいのに…
「ねぇ翔くん、ごはん行かない?」
「へ?」
突然誘われ何を言われているのかわからなかった。
智くんの方を見ると智くんはふにゃっと笑った。
「だから、ごはん食べ行かない?」
「え?いま?」
智くんは少し驚いたような表情をするとプッと吹き出した。
「今のわけないじゃん…これからすぐに収録だよ?
仕事が終わってからの話」
「そ、だよね…だって智くんにごはん誘われたことなんてないから…」
意外すぎ…というか全く想像したこともなかった。智くんとふたりで行くごはん…
「あ、誰か他にも行くの?」
「ううん、ふたりでだよ?」
「…やっぱりふたりなんだ…」
「ふたりきりじゃ駄目?」
智くんの寂しそうな表情が目に入り慌てて首を横に振った。
「あ、ううん…駄目じゃないけど、ふたりだけだと思わなかったから」
そう言うと智くんはほっと息を吐いた。
「じゃあいい?」
「うん、いいよ」
「よかった…」
智くんがとても嬉しそうに笑ったから俺も笑った。