第13章 pray
そう言ったら智くんが持っていたグラスをテーブルへ置いた。
「俺は翔くんにお祝いして貰いたい」
「でも一年に一度の特別な日だよ?やっぱり智くんにとって一番大切な人と過ごした方がいいんじゃない?」
「…だから、翔くんがいい」
真面目な顔してそう答えるけど酔ってるのかな?自分の言ってることわかってない?
「じゃなくて…そう言って貰えるのはメンバーとして嬉しいけど、智くんが好きな人とお祝いした方がいいでしょ?」
「だから翔くんなんだって」
智くんが表情を崩したかと思ったら苦笑いをした。
「…へっ?」
「まだわからないの?俺の好きな人は翔くんなんだよ」
俺が酔ってるの?それともやっぱり智くんが酔ってる?
完全に思考が停止してしまった俺…
「翔くん…大丈夫?」
「えっ…」
意識を戻すと目の前には心配そうな表情を浮かべる智くんがいた。
「あ、うん…大丈夫…か、な…」
頭が動き出した俺は智くんから聞いた話しとメンバーが話していた内容を思い出していた。
18年前から片想いで、すぐ近くにいる存在…離れられない関係で、凄い鈍感な人…そして男性………全部俺に当てはまる…
「…ほんとに俺なの?」
「うん…ほんとに翔くん」
「…なんで?」
「なんでたろうなぁ…最初見た瞬間、可愛い子だなぁ、って思ったのは覚えてる…それから暫くして翔くんと一緒に居ると気が楽だなって思って、更に会うのが楽しみになって…これって恋心なんだって気が付いたのは嵐になってすぐ」
「嵐になってすぐ?」
「うん…」
「それからずっと?」
「まぁ、正直付き合ったりした人はいたよ?だって翔くんと付き合うなんて無理だから…他に好きな人作れば翔くんのこと忘れられるかなぁって思ってさ、何人か試しに付き合ってみた…でも無理だってわかったんだ…ニノも言ってたけど存在が近すぎて忘れた気になってもすぐに復活しちゃうんだよ『好き』って気持ちが」