第9章 言葉より大切なもの
〈翔サイド〉
カメラマンさんがもっと顔を近づけろと言う…
そんなこと出来ないよ…
躊躇っていると智くんから顔を近づけて来た。
息が止まるかと思った…
なんだ…この感覚…
なんで俺こんなにドキドキしてるんだ?
撮影終了の声が掛かって智くんが離れていっても恥ずかしくて顔があげられない…
そんな俺の様子を見て謝る智くん。
誤解させたくなくて慌てて否定した。
智くんと目が合った瞬間また恥ずかしさが込み上げてくる。
智くんを見ていられない…
俺、どうしちゃったんだろ…
その後なんとかインタビューを受け、控え室に戻ってきたけど、智くんと何を話していいのかも分からない。
静かな空間の中、帰り支度を済ませた智くんが笑顔で
「お疲れ、先帰るね」
って、部屋を出ていった。
俺は智くんの背中を見送って、大きな溜め息をついた。
はぁ~…なんか疲れがどっと出た…
なんで?智くんの事、嫌じゃないのに、なんで智くんといるのが疲れるんだろう…
いつもだったら智くんがいてくれるだけで落ち着けるのに…
いつまでたってもドキドキとなる心臓の音が静まらない。
なんとか帰る準備をして部屋を出ようと荷物を持ったとき携帯がなった。
ニノからの電話だった。