第5章 すれ違いバースデー
side灰羽
「あのね、27日、月島くんの誕生日なの。
だから少しの時間だけでも会いたかったの。」
泣きそうな声の梢。
俺から梢を奪っておいて泣かせてるとか…
「なあ、梢。今からでも俺に…」
「なに人のモノ勝手に持って行こうとしてんのさ。」
ずしり。
頭の上に降りかかる重み。
…いや、上から渾身の力で押されてる!
「っ!ツッキーやめて!!!机とチューしちゃう!!」
「人のものを取る欲求不満野郎にはそれで十分。
ねえ、椎名サン、そんな油断した顔でさ、そんなに他の男、誘惑させたいわけ?」
「誘惑なんて!!してな…い」
「話くらいちゃんと聞いてよ。27日は取引先との食事会。だから次の日じゃダメ?」
「だって…27日は…」
「先方の申し出で断れなかった。だからさ、次の日と週末、僕の誕生日祝ってよ。」
「……ショートケーキ買って蛍の家に行く。」
「ホールケーキじゃなきゃ許さないから。」
「なあ、お二人さん。
いつまで俺の上で話してるつもり!!!」
そう。今の会話、俺、潰されたまま話してたんだけど!!
ガバリと体を起こせばツッキーはニヤリと笑い、梢は申し訳なさそうに謝る。
でも、まあいいや。
梢の笑顔が見れるなら。
俺は2人の邪魔にならないように食器を返しに向かった。
でも、残念だったな。
少しでも梢に気があったらって思ったけれど…
あんなに幸せそうな顔してたら奪えないよ。