第39章 ベイビー*ロマンチカ / 豊臣秀吉
(くそっ、早く嫁にしたい……っ)
今はまだ離れ離れに暮らしているため、こうして時間を作らねば顔を見る事も出来ない。
『お前が兄貴じゃないなら、俺達が舞の兄貴になる』
いつだったか、安土城で武将共に言われた言葉。
信長を筆頭に、『お前にはまだ嫁にやらん』と安土の武将の面々に宣言されてしまっている以上、迂闊な行動は出来ないし…
認められるって、改めて難しい。
舞を見ると、握り飯を頬張りながら、嬉しそうに遠くを見ている。
舞自身は、このもどかしい距離をどう思っているのだろうか……
「秀吉さん、どうしたの?」
見つめていると、視線に気がついた舞が首を傾げて尋ねてきた。
「いや、美味そうに食べるなぁと思って」
「……っ、秀吉さんも食べてよ」
「そうだな、いただきます」
そう言って、秀吉は舞が手に持っている握り飯に、ぱくっとかぶりついた。
舞がびっくりして身を強ばらせると、秀吉は満足そうに口を動かしながら微笑んだ。
「ん、美味い」
「秀吉さん、新しいのがあるでしょう……っ」
「それが美味そうに見えたから」
「……っ」
「もう一口もらっていいか」
悪戯っぽく言われ、舞はおずおずと遠慮がちに食べかけの握り飯を差し出した。
顔を近づけ、握り飯に口をつけると見せかけ……
そのまま不意打ちをついて、舞の唇を奪った。
「ん……っふぅん……っ」
舌をそっと絡めると、舞から儚く甘い息が、口付けの合間に漏れる。
腕を身体に回すと、その身体はだんだん熱を上げるし……
だから堪らなくなるんだって事。
いい加減解って欲しいし、感じて欲しい。
ちゅっ……ちゅぅちゅっ……
「舞……」
しばらく唇を堪能してから舞の顔を見ると、トロンと蕩けて見つめてきた。
(しまった…ちょっとからかうだけのつもりだったのに、この蕩けた顔……)
自分のした事に、割と後悔しながら身体を離す。
舞はちょっと名残り惜しそうにしながらも、身体を離してちょっと俯いた。