第32章 弥生月の願い鶴 / 豊臣秀吉
「……くっ、もう我慢出来ない、出る……っ」
「秀吉、さん…っあ……っ」
「舞、あ…っ舞…………っ!」
「あぁぁ………………っ!」
最奥を擦りあげ、貫いた瞬間。
舞が中を思いっきり締め上げた。
中が絞り取るように動き、秀吉の腰が思わず止まる。
秀吉は声なく天を仰ぎ、直後にどぴゅどぴゅと、すごい勢いで身体中を駆け抜けた。
全てを舞に注ぎ、濡れた身体のまま舞の身体を抱きしめる。
「ふふっ、あったかい、秀吉さん」
「お前のほうが、温かいぞ」
身体をくっつけ、温もりに浸り……
二人は顔を見合わせ、笑いあった。
「だから、蝶々結びは、ここを通して……」
「ん、こうか?」
「それじゃ固結びになっちゃうでしょ? 秀吉さんって、案外不器用なんだから、ふふっ」
「仕方ないだろ、女の髪なんて結った事ないんだから」
安土城の庭に面する縁側で、何やら仲良くやり取りをしている二人を見て、政宗と三成が顔を見合わせた。
「変わらず仲良いな、あの二人」
「そうですね、お似合いです」
「ちょーっと妬けるよな」
「政宗様、嫉妬ですか?」
三成の言葉に『違ぇよ』と政宗は思いっきり反論する。
後ろ頭を気まずそうに掻き、政宗は改めて二人を見つめた。
「……まぁ、子を授かったとなれば、秀吉がいつも以上にべったりなのも解るがな」
「そうですよ、来年は賑やかになりますね」
「しかし、子を授かって一月だと……ちょうど秀吉の誕生日辺りになるか」
「逆算すると、そうなりますね」
「あの温泉で、どれだけ頑張ったんだか」
政宗がくすくす苦笑する。
そして、眩しい目で舞を見つめた。
「……あいつは秀吉の傍のが幸せになれる」
「政宗様、何か仰いましたか?」
「いーや、こっちの話。 ほら、信長様に報告書出しに行くぞ」
政宗と三成は何やら言い合いをしながら、その場を去った。
秀吉はそんな二人の会話を微かに聞いていて……
憮然として舞の髪を結っていた。
「政宗、あいつ……」
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
舞の頭を優しく撫でた。