第2章 皆でわちゃわちゃお正月(2017.正月)
‐月島side‐
二十歳になってから、初めての帰省で、朝から兄ちゃんだとか、親戚だとかに飲まされて散々だった。
やっと、解放されて自室のベッドに寝転がっていると、スマホが着信を知らせた。
画面に表示された名前は、東京にいるりらで。
慌てて電話に出る。
「はい。」
『…あ。』
「あ、って何?独りが淋しくて電話してきたんじゃないの?」
新年の挨拶もそっちのけで、嫌味を言おうとする自分の口が嫌になる。
りらからの電話なんて、珍しいものが嬉しくない筈ないのに。
『出るとは、思わなくて。』
「じゃあ、なんで掛けてきたの?」
『月島くんだけ、いないの、淋しかったから。』
僕、だけ?
君、今は1人の筈だよね?
そんな疑問は、すぐに解決した。
『ツッキーと電話してんのか?代われって!』
『いっそスピーカーで良くね?』
電話口から聞こえた、タチの悪い先輩2人組の声によって。
僕だけ、って事は声はしないけど、きっともう1人もいるんだろうね。
腹が立ってきた。
「今、親戚が来てて忙しいから。夜にでも、こっちから掛けるよ。」
一方的に言うだけ言って通話を終了させる。
大した量もない荷物を鞄に詰め込んで、肩に掛けて部屋から出た。
「僕、東京に戻るよ。バイト、明日から入ってるの忘れてたから。」
家族に分かりやすい嘘を吐いて、家から出る。
行き先は勿論、あの家。
今からならまだ新幹線もある。
僕だけいないの、淋しいんデショ。
なら、帰ってあげるから、他の人とばかりベタベタしないでよね。