第8章 末っ子の秘密
アベルの方を向くと先程とはまた違った笑顔を向けていた。
「ずっと探してたんだアリス…」
アベルはそういうとアリスの頬に手を寄せた。
まるで大切なものを扱うかのように。
「…あの」
突然のことでアリスの頭は更にパニックになる。
困惑した顔でどうすればいいのかわからないアリスは表情でアベルに訴えるしかなかった。
それに気づいたアベルはサッと手を頬から話す。
「あぁ、いきなりで悪かったな」
「いえ…、それより何ですか。私はあなたたち海軍のいうことをきくつもりは一切ありませんからね」
気を強く持ってアリスはくいかかった。
そんな様子を見てアベルは苦笑を隠せなかった。
「全く、そういう所は母様にそっくりだ」
「え…?」
今この人母様にそっくりだって言いませんでしたか?
え、どういうことですか?
「ま、普通に考えても混乱するよな。信じられないだろうけど、俺はお前の実の兄だ。わけあって今は海軍にいる」
突然の告白。
こんな内容、誰だって想像できないと思うんです。
証拠もないのでとても信じられません。
「信じなくてもいいよ。でも、これだけは覚えておいてほしい。俺はお前の味方だ」
私の考えていることが分かったのか、アベルさんは愁いを帯びた表情で言いました。
「あの…、海軍の人はあなたが天竜人だとは知っているんですか?」
知っていれば海軍には入ってないですよね…?
普通はそうだと思うのですが…
「いや、知っているのはセンゴクさんだけだよ。後は誰も知らない。俺が海軍に入ったのはあるきっかけがあったんだ」
「きっかけ…ですか…?」
「あぁ、君が生まれてすぐのことだよ」
私が生まれてすぐ…
「俺たちの母さんはアリスを生んで亡くなったんだ。母さんは他の天竜人とは違った。差別など一切していなかった」
アベルさんが言うにはお母さまが無くなった後、急激に変化をしたのがお父様だったという。
お父様はまるで人が変わったように、天竜人の中でも地位を求めるようになったそうです。