第5章 霹靂
「はぁ?だから何だってんだよ。俺にはカンケーねぇ」
「そんな事ばっか言ってると、そのうち誰かに持ってかれちゃうよって話!それに、あの子よく男バレの試合とか見に来てるし、うちの部員に好きな人とかいたりして?」
「別にカンケーねぇって言ってんだろ」
正直、面白くはなかった。
確かに、男バレの試合は見に来てたのは知ってる。
面白くはないが、影山や国見らなんかとよく話してるのは見かけたし、きっとそいつらのうちの誰かが好きなんだろうと思ってた。
「岩ちゃん!!大切なものは自分で手に入れてなきゃダメなんだよ!!そんでもって、手に入れることが出来たら、絶対に手放したりしちゃダメなんだからね!!ちょっと聞いてる?
「あ~もぅ~、ゴチャゴチャうるせぇんだよ!黙れグズ川!!」
そんなメンドクセーやり取りを繰り返してばかりいたある日、伝言を預かったっていう他の部のヤツが俺を呼びに来て、誰が何の用事だと思いながら言われた場所に行くと、そこには、紡、お前がいた。
あの日、告白するだけして、更には及川にも冷やかされテンパって帰ってしまおうとするお前の手を掴み引き寄せた。
あの時から、この手を離しちゃいけない・・・いや、離すもんか・・・って思っていたのに。
今日、俺は・・・その〖 大切な手 〗を離す・・・
目を閉じて大きく息を吐くと同時に、俺のよく知る甘い香りを纏った風が吹き抜けた。
その香りの方向を向くと、いつの間に来ていたのか、紡が立ち尽くしていた。
紡の姿を見て、ゆっくりと立ち上がる。
『お・・・待たせ、しちゃいました・・・』
か細い声で紡が言い、そんなに待ってないと言いながら手を引き、共に座る。
いったい、どのくらい経ったろうか。
ちらりと紡へ視線を向けると、その長い髪を風に遊ばせたまま、じっと前を見据えていた。
前に進めないのは、俺か・・・。
そう、覚悟を決めると俺は紡の方に体を向けた。
俺が話を始めると、紡は急に俺の言葉に被せるように、どんなことを告げようとしているのか分かる、何を言われても受け入れると言ってきた。
まだ、何も言っていないのに、そんな事まで考えさせてしまった事を後悔する。
それから俺は、自分から付き合おうって言ったのにこんな形で終わらせてしまった事、バレーを優先させてデートらしい事も出来なかった事を謝った。
