第39章 聳え立つ壁
繋「菅原は最後に言ってたぞ。澤村と東峰と一緒のコートに、ワンプレーでも多く立ちたい。影山が疲れた時や、プレー中にハプニングが起きて流れを変えたい時、誰かの穴埋めでも、代役でも、見てるヤツらに自分の事を3年生なのに試合に出れなくてかわいそうだと思われても、自分が試合に出られるチャンスが増えるならいいんだ、ってな」
菅原先輩は・・・どんな気持ちでそれを言ったんだろうと思うと、胸が痛い。
繋「アイツは強いよ、ホント。オレも昔、菅原みたいな事が言えるようなヤツだったら、今とは違う生き方をしてたかも知れねぇって思ったよ」
繋心は・・・多分そんな事があってもハゲつる繋心のまま変わらない気もするんだけど・・・なんて、口に出したら怒られるよね、きっと。
バレないように小さく肩を竦めれば、繋心が妙な顔をして私を見る。
繋「紡、お前いまオレに対して失礼なこと考えてただろ」
『ぅぐっ・・・』
バーレーてーるー!!
繋「ま、いいけどよ。いや、良くはねぇか?・・・まぁ、アレだ。お前は早く部屋に戻れ?いつまでもオレの部屋にいると、ギラギラと目を光らせた先生が迎えに来ちまうからな。ほれ、シッシッ・・・」
『ちょっと!そんな犬でも追っ払うみたいにするのやめてよ!・・・だからハゲつる繋心なんだよ』
繋「あ?なんか言ったか小学生。寝る前に便所行けよ?あと歯磨きも忘れんな?」
『あぁもぅ、うるさい!おやすみ!』
・・・なんか余計な事まで思い出しちゃったよ。
まったく、なんで繋心はいつもいつも!
それにこないだだって繋心は私をパシろうとするし!
いつかギャフンと言わせて・・・
菅「・・・ゃん・・・紡ちゃんってば・・・聞こえてる?」
『あ、はい!なんですかスガさん?!』
ヤバイヤバイ・・・いまは余計なことを考えてる場合じゃなかった!
菅「そろそろ戻ろうか?って言ったんだよ。ほら、影山達は先に歩いて行っちゃったから」
菅原先輩の視線を辿れば、それはそれは確かに影山たちが会場となる建物の入口まで行ってしまっているのが見えた。
『置いてきぼりにするとか・・・影山サイテー』
慌てて歩き出せば、菅原先輩も歩き始めながら、何度も声掛けたんだけど紡ちゃんボンヤリしてたからさ?と笑った。
菅「あの、さ?ひょっとしてだけど、コーチからなにか聞いちゃった?」
