第36章 目指すべき場所へ
澤「そういう細かいことをいつまでも気にしてるから、ガラスハートのヒゲちょこなんだよ、旭は」
『いいじゃないですか、ガラスハートでもヒゲちょこでも』
何気なく会話を聞きながら靴を履き替え、振り向く。
『いつもはホンワカしてる東峰先輩でも、いざコートの中に入ればガラリと人が変わったように···カッコよくなるんですから』
普段はこんな風にいじられキャラでも、コートに立てば誰もが目を見張るスパイクを打つことを目の当たりにしてきた私はそう言いながら笑ってみせた。
『大地さんだって烏野のお父さんキャラだし?スガさんだってお母さんキャラだし、オンとオフの切り替えって大事だと思います···影山はいつも王様だけど』
影「おい···お前いい加減にその呼び方やめろ」
『ほらね?』
影山を王様呼びすれば予想通りの反応が返ってきて、その眉間のシワの深さに目を細めた。
澤「そうは言っても、別に俺達はそれを演じてるわけじゃないし、自分でもキャラ立ちなんて分かんないけど」
う~ん?と考え出す澤村先輩の顔を見上げて、それが普通の反応ですよ、とまた笑う。
『どんなときもスイッチ入れっぱなしより、ずっとずっといいですよ。あ、ほら!ちょうどいい見本が···』
澤村先輩の向こうに、武田先生の姿を見つけてこっそりと指さしてみる。
菅「って、武田先生じゃん?」
澤「だな?」
『武田先生も自然とオンとオフの切り替えがある人だと思います。それこそ普段は穏やかでニコニコとしてて。だけど、大事なことを教えてくれる時は目線を合わせて真剣に向き合ってくれました。私は···月島君とのトラブルの時や、病院にいる時に話を聞いてもらった時にそれを感じました。桜太にぃや慧太にぃとは違う視点での大人の意見と言うか、なんかそういう感じの···って、なんだか論点がズレちゃいましたね』
遊ぶ時はちゃんと遊ぶ。
練習する時はちゃんと練習する。
そんな簡単な事が出来なければ、この先どれだけたくさんの大会に出ても···いつかは立ち止まってしまう。
『とにかく!みんなでカラーコートに立つには練習、練習、練習です!繋心も前に言ってたし!』
澤「だな。じゃ、揃って体育館行くか」
菅「おーっし!じゃあ競走するべ!」
慌ただしく靴を履き替え出す菅原先輩を見て、他のみんなもこぞって靴を履き替える。
