第34章 スイッチ・オン
~ 澤村side ~
流れを変えるわけでもなくタイム要求?
しかも、武田先生が慌ててる···とか。
菅「大地、あれ見て!桜太さんが紡ちゃんを座らせた···まさか、ケガとか」
ケガ···もしかしてさっきの?!
救急箱を開け広げる慧太さんの隣で、桜太さんが紡の顔を見ながら何かを話してる。
観覧通路にいると、何を話しているのかまでは聞こえないけど、なんかちょっと···揉めてる?
菅「あ、岩泉が審判台から降りて来た···何が起きてるんだ?」
「ここからじゃイマイチ分からないな。かと言って、降りていってもコートの近くに行けないし」
あ、っと···?
紡は残して、唯一最後の1人のメンバーを入れた?
岩泉と桜太さんが何やら言葉を交わして、それに頷いた岩泉が審判台へと戻って行く。
紡は···
桜太さんが指示を出して、慧太さんが救急箱から消毒液と···ガーゼ?
やっぱりケガなのか?!
しかも、ガーゼと消毒液を使うほどの?
以前ここでの事が頭を過ぎり、ドクンと大きく胸が鳴る。
菅「あ、慧太さんが絆創膏を出してる···紡ちゃんは頑なに拒んでるけど」
スガに言われてベンチサイドを見れば、桜太さんが絆創膏を手にしながら紡と真剣な顔して話してる。
やっと紡が頷いたのを見て、桜太さんがいつもの桜太さんらしく微笑んで絆創膏を開封した。
貼り付ける場所は···こめかみ辺り?
さっきのレシーブで切ったのか?!
側に居られない自分にヤキモキしながら、その様子をずっと見守る。
俺がバタバタしても仕方ないんだ。
今は紡の側には、桜太さんっていうちゃんとした医療関係者がいる。
せめて、この試合が終わったら。
そしたら···駆けつけて状況を聞けばいい。
ただの同行者である俺もスガも、出来るのは···それくらいしかないから。
菅「見て大地!紡ちゃんがコートに戻る準備してるから、ケガ自体は大した事なかったのかもね」
「あぁ、そうだな···」
桜太さんが一瞬見せた真剣な顔が浮かび、紡がコートに戻るのは紡がわがままを言ったからじゃないのか?なんて、ちょっと思ってしまう。
けど、もし仮にそうだとしても。
ほんとに何かあれば、どれだけわがままを言っても許可しないだろうから。
かすり傷で済んでるって、事なんだろう。