第33章 それぞれの覚悟
桜「紡、ノート貸して」
試合終了と共に桜太にぃに言われて、記録を取ってたノートを渡す。
試合が終わる度にこうやって渡して、私が書いた記録を見ながら、桜太にぃが赤や青のペンで書き込んでいく。
最初は何を書き込んでるのかと思ったけど、ノートを返された時にその謎もすぐに解けた。
赤で書かれた部分は、みんなが注意するところで、次の試合ではその部分を意識して試合を進めながら修正すべき箇所。
逆に青で書かれた部分は、昨日まで練習して来た事がちゃんと出来てるから、あとはどうしたらいいか···とか。
短い時間の中でどうしたらこんな風にコートの図面まで書き込んでコメントを記入出来るのか···さすが桜太にぃ。
···とか、思ってる場合じゃないよね。
及「一巡したので、15分の休憩を挟みま~す!」
主審なのに···軽い。
脱力するような声に笑いを浮かべながらみんなの輪の中に入った。
菅「はい、紡ちゃんもお疲れ様!」
ポンっとマグを手渡され、いつも以上に眩しいスマイルを向けられて困惑する。
『スガさん、私ずっと記録係してたのでそこまでグッタリしてませんよ?』
菅「記録係だって疲れるだろ?ずっと試合を見ながら記録をつけて行くんだから。それに、さっき少しコートにも出てたじゃん?」
あれは桜太にぃに流れを少し変えるようにって言われたからだけど。
白帯狙って油断させろ、とか。
それもちょっと···危うかったけど。
桜「この休憩の内に、みんなに確認したいことがあるから···ちょっと集まって?」
にこやかに言いながらみんなに向けて手招きをする桜太にぃの周りに、メンバーが駆け足で集まって来る。
道「あの、確認したいことっていうのは?」
桜「うん、それなんだけどね?とりあえず今、ゲームが一巡した。結果は言わなくても···分かってるとは思うから、敢えて言わない」
桜太にぃの言葉に、みんなが困惑した表情を見せる。
確かに結果は言われなくても、それぞれがちゃんと分かってるから。
白星は、ゼロ。
引き分けも、ゼロ。
あるのは···黒星のみ···
桜「あぁ、そんな顔しなくていいから。最初に言ったけど、一巡目は負けてもいいんだよ。さっきまでのゲームはあくまでも相手チームのデータを取るための···だからね」
慧「そうそう。ま、おかげで結構なデータが取れたぜ?」
