第32章 不協和音
~ 道宮side ~
『大地さん、道宮先輩、お邪魔しました!』
「あ、ちょっと?!···行っちゃったか」
もっといっぱい話がしたかったのになぁ。
西谷君と並んで小さくなって行く後ろ姿を見ながら、何とかあの子に助っ人を頼まないかと考える。
だって、同じ助っ人頼むなら···ルール知ってる方が助かるし、経験者であればなんの問題もないじゃん?
あの子の小柄な感じからして、スパイカーじゃないだろうって事しか分からないけど、それでも経験者なら私としては大いに助かる!···んだけどなぁ。
澤村···説得してくれないかなぁ。
あと、菅原とか東峰とか。
う~ん···東峰はあんまりアテにはならないかも。
他力本願なのはダメだって分かってるけど、親密度の低すぎる私より、澤村とか菅原だったら部活以外の時間でも一緒にいる所とか見てるし。
とにかく私が直接話さなきゃダメなんだから、もう一度だけ···詳しい話だけでも聞いて貰えるようにお願いしてみるとか?
···まずはそこからだ!
「澤村、あの子のクラス教えて?」
澤「別にいいけど、無理強いとかするなよ?」
「分かってるよ。ただ、断られてもいいから、あ、出来れば断られたくないけど···細かい事情だけでも聞いて貰えないかなって」
まずはそこからだからさ!と言って、澤村にあの子のクラスを教えて貰った。
澤「道宮が嫌じゃなければ、俺も一緒に行くけど?」
「ううん、大丈夫。これは私が乗り越えなきゃいけない最初の壁だから」
澤「そうかも知れないけど···ちょっと、あ~···うん···デリケートな問題がある、かな?とかさ」
デリケート?
それってどういう意味だろう。
普段はハッキリと物言いをする澤村が、ここまでぼかした言い方するなんて···
「大事にしてるんだね、あの子のこと···」
ツン···と痛む胸の奥から、ポロリと本音がこぼれる。
澤「まぁ···ね。大事だとは思ってるよ」
窓の外を見ながら言う澤村に、チクリと胸が痛むけど。
「あ~もう!はいはい、ごちそうさま!じゃあね、澤村!」
無理に笑って、バシバシと澤村を叩いて。
逃げる様に立ち去るしか出来ない私がいた。