第29章 ネコと呼ばれる人達
凄い···
どっちのチームも。
ゲームを再開してから、まだ1度もボールを落としてない。
途切れることのない集中力に、思わず息を飲んだ。
慧「そろそろアイツら、いい加減···気が付いてんだろ」
桜「そうだね、でも。それを判断するのは、俺達ではないよ」
体育館の壁に寄りかかった2人の会話が聞こえてくる。
慧「それにしたって、アイツらよ。あんだけスゲー集中力かましてんのに、何で上がれねぇんだか」
桜「まだ荒削りの原石だからね、彼らは。でも、もう既に、俺達なんてとっくに足元にも及ばないよ」
そっと振り返れば、2人とも···凄く楽しそうにゲームを見ながら話している。
自分達の現役時代とかを、思い出してるのかな?
慧「またまたぁ、そんなご謙遜を」
桜「そんなんじゃないって。本格的にバレーから離れてどれだけ経ってると思ってるんだよ。俺も、慧太もね」
桜太にぃはそう言ってるけど、2人とも家ではバレー···やってるよね?
バレーっていうより、自主錬的トレーニングだけど。
ー ピッ! ー
菅「あぁっ!!ゴメン!マジゴメン!」
ちょっと目を離した隙に、どうやら澤村先輩チームが点を入れたようで、菅原先輩の悔しがる声が響いた。
繋「ようし!じゃあ、途中だけどゲーム終了だ。お前ら、ちょっと集合しろ」
え?
もう終わりにしちゃうの?
私が思うのと同じように、コートの中にいるメンバー達も戸惑っている。
慧「最後までやらしてやればいいのにな?」
桜「そうだね。でも、今の1点でいろいろな事が分かったはずだから」
みんなが繋心のところに集まり、言葉を待つ。
私も清水先輩の隣へと移動して、繋心の話を記録するべく準備をした。
繋「ゲームとしては途中で終わらせたが。お前ら、今のプレーの中で気付いた事があんだろ」
澤「コーチは、両方のチームにセッターを徹底的に狙え、と指示を出していたことに関してですか?」
菅「うわ。やっぱりそうなのか···」
繋「ま、それもある。だが···それによって自分達がどう動くべきか、誰がセッターのフォローに回るべきか、いろいろ考えたハズだ。どうだ、違うか?」
···なんでそんなに偉そうなんだろ、繋心。
影「まぁ、自分が狙われてかもって分かった時···1回だけ澤村さんとスイッチを試しました」
繋「だな、見てた」
