第1章 朝焼けの声
「……まぁ、彼処は所謂審神者の手中だ。負傷しても入りたがらない者も多い……あれだけ負傷して、手入れされた君がその様子では皆が不安がるからね。流石の僕も少しビックリしたよ。」
「申し訳、ありませぬ……」
「まぁ、落ち着いてくれたなら良かった。」
必要以上に聞いてこない燭台切に有り難さを感じる。
今の状態では説明出来る自信がなかった。
「もう、傷の方は大丈夫なのかい?」
「ええ、お陰様で…」
「その様子だと、まだ顔を見せてないんでしょ?早く行ってきてあげなよ。」
何の事かと、首をかしげる。
「三日月だよ。君を運んで来たのは彼なんだ。……かなり、取り乱していたから…すごく、心配している筈だから。正直、あんな彼は初めて見たくらいだ。」
「三日月が…?」
今この瞬間まで、忘れていた。
いや、浮かれていたと言うのが正しいか。
私は勝ち戦であれほどの大怪我を負ったのだ。
かなり、不味いのではないだろうか。
隊の皆に一体どんな顔で会えばいいのか…
急に我に帰り、青ざめていれば燭台切が小さく吹き出した。
「大丈夫だよ、誰も責めはしないさ。ただ、元気な顔を見せてあげに行っておいでって言ってるだけだよ。」
「元気な顔を、ですか…。」
「そう。あとその乱れた髪を整えて、ね。いつも身嗜みは整ってる君なんだ、逆に心配されるよ。」
完全に忘れていたが、今の私は確かに酷い出で立ちであった。
他の者に遭遇しなかったのが幸運であったほどには、他者に見せられない姿である。
「っ、…これは、忘れて下され……御主には迷惑を掛けてばかりじゃな。」
穴があったら入りたいとでも言おうか。
急に恥ずかしくなった私を燭台切は笑って見送った。
部屋に戻るまで誰にも会わなかったのがせめてもの救いである。