第2章 木の葉
「身元も知れぬ者は信用ならない?当然ですね。私は汐田。磯は潜師の者です。散開の際木の葉に残った磯人の相談役になって下さった奈良くんとは知己の仲です。お伝え下さればすぐわかるでしょう。連れは同じ潜師の伯父です。細かな事情は五代目様にお目通り叶いました際にお話したいと思います」
一息ついてから、女ー汐田は目を伏せた。
「…更にもうひとつ。磯影様に采配を仰げれば…」
「浮輪の小童にか」
渋い顔をした自来也に、汐田は意外そうな顔をした。
「波平様をご存知ですか」
「あれの親父から知っとるわ」
「ならば話は早い。磯へ行くべきか薬事場にいるべきか、五代目と磯影様の一存にお任せしたい旨、是非、是非お伝え下さい」
汐田は安堵の息をついた。
「…肩の荷が、降りました……。良かった」
初めて穏やかな表情で目を閉じた女を自来也が推し量るように眺める。
「…医者にかかるか?」
「…はい。磯の薬事場のある木の葉なら…」
言いかけて、汐田は口元に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「…やっと…本当に休めそうです。良かった……」
額のシワが消え、汐田が気を抜いたのがわかった。
三人が三人とも、汐田を見、互いを見合った。
「…お前らは一楽で飯を食っとけ。わしは残る。ナルト、飯を食ったらシカマルに繋ぎをとれ」
磯の者か。散開で逸れて里に帰りたくなったか?いや、ならさっきの二人組はなんじゃ?おかしい。絶対に妙だ…。汐田?汐田はわからんが磯辺…磯辺に聞き覚えがある気がすんじゃよな…
考え込んだ自来也は、生温かい空気にギクッとした。
部屋に風が吹いている。
「あッ、いかん、また、磯辺!!!」
爺の叫び声。
汐田が、寝台から消えた。