第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
“クライガナ島に行ってみないか?”
ひょっこりと現れたシャンクスにそう誘われた時、“とうとうこの日が来た”と覚悟した。
クライガナ島には滅びた王国があって、そこに七武海の一人が住んでいる。
“偏屈な男だが、おれの大切な友人だ”
シャンクスは日焼けした顔に笑みを浮かべながらそう言ったが、すぐには返事ができなかった。
“それは私がずっと会いたいと思っていた人?”
そう聞くと赤髪は優しく頷き、“お前をずっと会わせたいと思っていた奴でもあるんだ”と続けた。
シャンクスはその友人のことを“いい奴だ”と言ったけれど、私はその人物が悪魔であることを知っている。
会いたいと思うのも、別に好意を寄せているからではない。
“アイツに会って、確かめたいことがあるんだろ?”
シャンクスは何でも知っていた。
私がその人に会いたいと思っていることも、確かめたいことがあることも。
そして・・・
その人に会うのが怖いと思っていることも。
小さい頃に出会ってから、シャンクスはずっとそうだった。
隠し事をしようとしてもすぐにバレてしまう。
ある日突然現れた、赤髪の海賊。
折れた剣を握りしめ、血の海の中で佇んでいた私に、優しい手を差し伸べてくれた。
あれからずっと、私が地獄に堕ちないように、歩むべき道を指し示してくれた。
もしシャンクスがいなければ、今の私はない。
“ジュラキュール・ミホークに・・・会いに行く”
もしかしたら、私の存在を否定されるかもしれない。
お前など知らないと冷たくあしらわれるかもしれない。
それでも、確かめたいことがある。
真実を知るのは怖いけれど、この機会を逃したら、もう二度とチャンスは訪れないかもしれない。
シャンクスも、ミホークも、海賊という刹那的な生き方を好む人達だから。
“私をクライガナ島に連れて行って”
“よし! なら今すぐに行くぞ、海に出る支度をしろ”
シャンクスの海賊船に乗るのは、故郷を離れた時以来、15年ぶりのこと。
クレイオは教会の天窓から差し込む月の光を見上げ、ロザリオを握りしめていた。