第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
思いもかけないクレイオの決断に、誰もが言葉を失う。
両親や弟が安眠の場所を得た今、きっとクレイオはこの船に乗る・・・そう思っていた。
「わかった。でも、これだけは忘れるな」
真っ赤なベストの裾を潮風に靡かせ、ルフィが腕組みをしながらニッと笑う。
「お前がもし、病気になった時はチョッパーがいる」
全ての病気を治す“万能薬”になると胸に誓ったチョッパー。
「お前がもし、寂しい時はウソップがいる」
ウソつきだが、ルフィと同じように少年の心を持つウソップ。
「お前がもし、腹減って死にそうな時はサンジがいる」
その手料理で人に命の源を与えるサンジ。
「お前がもし、どうしていいか分かんなくなった時はロビンがいる」
聡明で博識な考古学者ロビン。
「おれ達が海のどこにいてもよ! ナミが必ず船をこの島に辿り着かせてくれる」
情に厚い、天才航海士のナミ。
「そんで、またお前のことを泣かせる奴がいたら、ゾロがぶっとばすから大丈夫だ!」
ルフィは麦わら帽子に手をあてながら、大きな笑顔を見せた。
「お前はおれの友達だからな! お前がおれ達に助けを求めれば、必ず駆けつける」
これがゾロの仲間、麦わらの海賊団。
クレイオは溢れる涙を抑えることができなかった。
「お前、なに泣いてんだよ。変なやつだな~」
ルフィはしししと笑うと、何かを思い出したようにズボンのポケットの中をまさぐった。
そして、黒いものをクレイオの肩に乗せる。
「これ、昨日見つけたんだ! 特別にやるよ!」
それは、大きなカブトムシだった。
ナミが、“そんなもんあげてどうすんのよ”と言ったが、クレイオにとってはとても嬉しいプレゼント。
「・・・ありがとう」
本当に・・・ルフィと一緒にいたら、どんな悩みも小さなことのように思えそう。
ゾロが信頼を寄せているのも分かる。