第10章 魔王様と花嫁
【隼】
某スタジオで今日はプロセラがゲストの音楽番組の収録が行われた。
大きなミスも無く、無事に終了したスタジオを後にし、楽屋へ戻る。
「お疲れ様」
笑顔で出迎えてくれた小春。
その笑顔に自然と僕も笑顔になれる。
「私、外で待ってるね」
そう言い、小春は楽屋を出てしまった。
「僕はいても…」
「いやいや、俺たちも居るからな!隼」
着替えと帰る支度をしていると、楽屋の外…廊下が少しざわつき始めていた。
「はあ!?来れなくなったぁ!?」
「はい…事務所の方にも連絡したんですけど…」
「撮影今日しか無いんだぞ!」
楽屋からこっそり覗いてみるとプロデューサーらしき人とスタッフが立っていた。
「とにかく、事務所手当たり次第に交渉して今から来れる子呼んで!」
「は、はい!」
どうやら撮影当日のトラブルらしい。
「すいませーん!通ります!」
「どうすんだぁ!?花嫁役は…」
花嫁?
「すいませーん……衣装通らせて…わっ!!」
ドン!
「きゃっ!」
衣装を運んでいたスタッフの1人がつまづき、衣装は天井ギリギリまで舞い落ちていった。
パサ……
「小春!」
転んだスタッフに押され座り込んだ小春の元に行くと、白いレースのベールが小春に頭に掛かった。
「隼くん…」
「…………」
「隼くん?」
「綺麗だ…」
思わず声に出してしまったが、本当の事だから仕方がない。
「すみません!大丈夫ですか?」
「はい…私は。衣装の方は大丈夫ですか?」
一瞬だったけれど、忘れられない。
「花嫁さんみたいだったね」
「え?」
「小春が…」
「そんな事…」
「キミ!ちょっと時間あるかい?」
僕たちの会話に割り込むように入ってきたのはさっきのプロデューサーだった。