• テキストサイズ

【薄桜鬼 学パロ】サクラチップス

第2章 サクラ散る頃


お日様はすっかり傾いていて、夕日まで後一歩のところ。

私はこの中途半端な時間も好き。

「まだ冷えるな。」

そう言いながら、原田先生は、たばこに火をつけた。

そして、また、私の方をじっと見て…

「お前の10年後が怖ええな。」

と、苦笑しながらおかしな事を言い出した。

「なにそれ?」

「だからよ…10年後はどんだけいい女になってんのかなって思ったんだよ。」

「いい女?…10年後ならなれる?」

「今でもそうとうきてると思うぜ。…教師の言うことじゃねえが・・・」

いい女ってなんだろう?魅力的な女性ってこと?そうなれたら…

「ねぇ先生。いい女になったら…私から離れて行ったりはしないのかな?」

「ん…?」

「大好きな人が…私のことを大好きで大好きで仕方なくなっちゃって、離れられない!ってなるかな…」

「さあな……」

「さあな…って…」

「まあ…少なくとも、俺なら離さないかな。」

…そんな言葉を聞きたいな。一君から。きっと叶わないんだろうけど。

ああ…また…あんなに泣いたのに、どこにそんなに残っているのか…涙がポロポロこぼれてきた。

まだ…失恋って決まったわけじゃないのに。これから訪れるであろうそれが、怖くて仕方ない。

「んだよ…泣いてんなよ…」

先生はぐいっと私を引き寄せて、自分の胸に私の顔を押し付けた。そして軽く片腕を私の背中にまわしす。

先生のにおいってこんなにおいなんだ…。ほんのりたばこのにおいも混ざった大人の男の人のにおい。

なんだか安心する。

一君意外の男の人の腕の中。こんなのダメだよって思うけど、今の私には甘い蜜。

先生の腕の中は、あったかくて、すごく心地がよかった。

原田先生はしばらくそのままでいてくれて、私が落ち着いたのを見て、

「もう帰れ。…また泣きたい時には貸してやるよ。」

と言って、腕を解いた。

「先生ありがと。」

「どういたしまして」

空は遠くに夕日が広がって、すっかり暗くなりはじめてる。

「気をつけて帰れよ?」

は~い、と一言返事をして、私は屋上を出た。
/ 255ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp