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君が笑う、その時まで

第12章 揺れる思い


 思い出した。

 本当は忘れたかった、否定し続けてきた思いに触れてしまった。

 今の私にはいらないと、そんなのはただの理想論でしかないと、そうやって自分の本心をひたむきに隠してきた。

 本心と向き合ってしまえば、私はきっと後悔する。


 バスケをしたいと思ってしまえば、いつだってあの頃の自分と向き合うことになる。


 忘れたい、忘れたくても忘れることができない思いを、叫びを、痛みを、今の私に受け止めるなんて――


「私は……私には、無理なんだよ」

 深く息を吸って、ゆっくりと吐く。

 心を落ち着かせたくて深呼吸をしたつもりが、胸の奥からあふれる思いをせき止められそうにはなかった。

 自制できない思いが今か今かと喉を刺激する。

 ずっと抑えてきた激情がこみ上げてくる。

 それでも必死で堪えてきた。

 のに……



「そんなの、やってみなきゃ分からないじゃないですか」

「っ…………!!」

 直後、ぱぁん、と乾いた音が耳朶(じだ)に触れた。
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