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君が笑う、その時まで

第18章 変化


緑「――ところでお前に訊きたいことがあるのだよ」
 緑間君はコホンと咳払いをし、私をじろりと睨んだ。

 何というか……普段接している誠凛や海常の選手とは違う、どことなく近寄りがたい雰囲気に戸惑いこそすれ、睨まれただけで物怖じする私ではない。


伊織「うん?でもさ、私は『お前』じゃないよ?」

緑「は…?」

 真面目でカタブツな彼の事だ――そう踏んだ私はわざと彼の虚をついてみた。
 
伊織「だから私、『お前』って名前じゃないんだけど?
 大体初対面の人に何か訊くときはまずは自分から名乗るべきじゃないの、そこ」

 案の定、緑間君は苦々しそうに唇を噛んだ後自己紹介を始めた。

緑「…秀徳高校1年、緑間真太郎なのだよ。それでお前の名は?」

伊織「誠凛高校1年、大前伊織。
 先に断っておくと誠凛バスケ部のマネージャーじゃないから。
 秀徳のオールレンジシューター、緑間真太郎君」

 直後、緑間君はさっき以上に驚いた表情を見せた。

黒「先ほどの試合、やっぱり観ていたんですか?」
 言葉を失った緑間君にかわって黒子が訊ねてきた。

伊織「んー…実を言うと用があって前半は観てないよ。実際君たちの試合を観たのは後半だから」

 そこで一旦言葉を切り、緑間君に視線を戻す。

伊織「でも準決勝は観たから君のシュートレンジの広さと正確さについては知ってるよ。すごいね」

緑「……フン。俺は常に人事を尽くしているのだよ」

 あ。この店に入ってきたばかりの態度に戻ってきている。――なんて彼のことを微笑ましく思いながら私は「そっか」とあいづちを打った。

伊織「で、あっしに何を訊きたいのかね?」

緑「……お前は、」

 彼が意を決したようにおもむろに口を開く。


 刹那。



 ――べしゃっ。



伊織・黒・火・黄「「「「あ。」」」」
緑「……とりあえず話は後だ。――高尾、来い」

 頭の上に降ってきたお好み焼きを払い、緑間君は高尾君を連れて店の外に出ていってしまった。


 程なくして店の外から断末魔の叫びが聞こえてきた……。
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