第39章 Daylight
その日、いつもより少し早く目を覚ました俺は、朝食の前にベッドカバーを全て外し、用意してあった真新しい物に変えた。
軽めの朝食を済ませた後は、リビングから寝室に至るまで、全ての部屋に掃除機をかけた。
水垢で曇っていた窓だって、ピカピカになるまで磨き上げた。
気付けば時計の針は間もなく正午をむかえようとしていて…
「いっけね…、急がないと…」
洗濯機を回したままで部屋を飛び出た俺は、最近になって岡田から譲り受けた自転車に跨った。
自由のきかない右足では、ペダルを漕ぐのも一苦労だけど、歩くよりはよっぽど時間の短縮になる。
それに乗り心地だって、そう悪くは無い。
予めメモしておいた物をスーパーで購入して、商店街を抜けようとした時、俺の目にある物が飛び込んできた。
俺は店先に自転車を停めると、躊躇することなそれを手に取り、店の中に入った。
「プレゼント用に包装しますか?」
店員の笑顔に、
「いえ、普通で…」
と答えた。
“特別”な物なんて必要ないから…
簡易的な紙袋に入れたそれを自転車のカゴに放り入れ、俺は再びマンションに向かって自転車を漕いだ。
マンションに着いた頃には、すっかり陽は天辺まで登り、適当に引っ掛けただけのTシャツは、しっとりと汗ばんでいた。
「あっち…」
額の汗を手の甲で拭い、カゴの中の物を両手にぶら下げた。
そんなに買ったつもりは無いけど、腕にズシッとくる。
それでもエントランスの掃除をしていた管理人夫婦と笑顔で挨拶を交わすと、エレベーターに乗り込んだ。