第27章 Face
人数分のお茶を持って事務所に入った俺と侑李は、四人とは少し離れた場所に腰を下ろした。
特に何が…というわけではない。
ただ、 互いに腹の中を探り合うような状況の中に、何事も無かったように入ることが、少しだけ躊躇われた。
重苦しい時間が流れ、それに耐えられなくなったのか、松本が長く息を吐き出した。
「俺に聞きたいことがあるんだろ? さっさと聞いたら?」
胸の前で腕を組み、長い足を組む。
これがついさっきまで、土下座までして許しを乞うた男なのだろうかと疑うような、そんな横柄とも言える態度に、岡田の片眉がピクリと上がる。
普段は至って温厚に見える岡田だが、実はその導火線は至極短いことを、俺は知っている。
静かな怒りは、その声色にも顕著に現れ…
「君のことは粗方調べさせて貰ったが、君は中々の経歴を持っているようだね?」
公判資料がギッシリ詰まったファイルを捲り、岡田が上目遣いで松本を見上げる。
その目に一切の笑はない。
「君の家は元々、地元では名の知れた代議士の家計だそうじゃないか? どうして君は跡を継がなかったのか…教えてくれないか?」
俺の家と同じだ。
俺の家も、代々弁護士を生業としてきている家系で、俺は当然のように父や祖父と同じ道を選んだけど…
もし松本の中に、親に対する対抗心があったとしたら…