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見つめて、声で

第1章 出会いは突然に




「ねぇ……。」


そんな思いに浸っていると、よく状況が飲み込めていないユリが耐えきれず、といった感じで私に声をかけてきた。


眉を中央に寄せながら、彼らに聞こえないように声を小さくして言葉を紡ぐ。


「あの……ホント失礼なのかもしれないけど……誰?」


やたらイケボの集団だけど。


そんな風に付け加えてまた彼らを盗み見るユリ。


彼女の金髪をまとめている真っ黒なゴムが揺れる。


そんなユリの行動におかしさが込み上げて私も声を小さくして言った。


「声優さんだよ。ほら、ユリも好きなヒロアカの飯田君の声を担当してる人もいるよ。」


「え!マジで!?どれ?誰?」


「んー、顔見ちゃうと分かんなくなるのかな。目瞑ってみて声だけ聞いたら分かるかも。」


冗談半分で言ってみれば、その言葉に大きく頷いたユリ。金髪とは違って本来の色を失っていない瞳を瞑った。


その間も私たちの存在を忘れているかのようにじゃれ続ける彼等。


木村さんがのぶ君を茶化せば、のぶ君は界人君に助けを求め、それをさらりと先輩後輩なしに界人君はかわす。


自然に口許から笑みがこぼれた。


けど……。


「っ、とと……。」


身体的な問題は解決は出来ないらしく、また激しい目眩が私を襲う。


同時に頭に響く鈍痛がバランス感覚を失わせた。


少しだけ体が傾き、足の力は抜け、うずくまっている体制から尻餅をつく形になる。


(さ、さすがに一週間睡眠時間2時間だとやば……。)


そんなふらふら姿の私の様子を見て、私が体調が良くないことを思い出したのか、目の前の男三人組とユリが慌てて私の回りに集まった。


四方八方を塞がれる私。
同じリズムと呼吸で動く彼等に苦笑しながら、先程とは違う優しさを感じる。


「大丈夫?。家、一緒に帰ろうか?」


ユリが綺麗なまつげを揺らしながら心配そうに眉を下げ、言葉を紡いだ。


けれど彼女は仕事中。
迷惑はかけられない。


「大丈夫だよユリ。近いし、帰れるよ。」


へらりと笑って見せれば、ますます彼女は目を細め、心配そうに眉を下げた。


苦さを抱えた顔で私の背中を優しくする。


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