第11章 恋、気付く時
体育館に残ったメンバーに声を掛けるが、どうしても莉緒ちゃんだけが見つからない。狂犬ちゃんも岩ちゃんも一緒じゃないみたいだし、まさか一人じゃないよね?なんて思いながら体育館を歩き回った。そして、自販機の横で小さく蹲っている莉緒ちゃんを発見した。
「莉緒ちゃん?バス来たよ、帰ろう。」
声を掛けるも、反応は無し。
「莉緒ちゃん?」
「…及川。」
絞り出すように発せられた声は小さく、震えていた。そして、莉緒ちゃんは蹲ったまま話し続けた。
「…負けて悔しいのは皆な筈なのに、…ごめんなさい。私も一緒にコートに立ちたいって思ったの。皆と一緒に戦いたかったって。こんな時に自分も出たかったなんて我儘言ってごめんね。」
顔を上げた莉緒ちゃんの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。でも、不思議とそれを綺麗だと思った。そして、胸が苦しくなった。
「どうして私は女なのかな?男に生まれてたら皆と一緒にコートに立てたのに。ごめんなさ────」
涙を流す莉緒ちゃんの手を引いて莉緒ちゃんを抱きしめた。
「大丈夫だよ。莉緒ちゃん、ありがとう。」
莉緒ちゃんが笑ったら嬉しくなるのも、莉緒が泣いたら苦しくなるのも、岩ちゃんを好きだと言った莉緒ちゃんを応援しながらも、心の何処かで何かがつっかえてモヤモヤしてたのも全部そうだ。
───俺は莉緒ちゃんが好きなんだ。
俺の胸の中で子供みたいに泣きじゃくる莉緒ちゃんを強く抱きしめた。俺の腕の中で泣く莉緒ちゃんが愛しくてたまらない。なのに、莉緒ちゃんが想いを寄せる人は俺じゃない。