第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
短く啄むようなキスを重ねて、首元に舌を這わせた。
くすぐったがるように逃げる体を捕まえて、目を合わせる。
「……っ、好き…」
視界が霞んで、まともに前が見えない。
頬を伝い落ちる涙が、結木の胸元へと雫を落とした。
『…蛍くん、ありがと…』
好きだと伝えて、ありがとうと返されることがこんなにも辛いことだなんて、知らなかった。
涙が溢れて止まらない。
「っ、嘘でも…いい……」
好きだと言って。
僕の思いは嗚咽に混ざって、彼女に届くことは無かった。
気持ちとは裏腹に、彼女に触れることが体ばかりを昂らせていく。
熱く脈をうつものに、ゴムを被せて結木の入口にあてがった。
『…ゆっくり、ね』
「そんなの、わかってる」
嘘だ。
こんなこと、分からない。
実際には、君しか見たことも触れたこともないのに。
君は…違うんだものね。
ゆっくりと自身を結木のナカに突き立てた。
涙で霞んで、彼女の表情はよく分からなかった。