第14章 【切】新しい私の生まれた日/カゲヤマトビオ
状況を上手く理解出来ない私にクロは説明を続けた。
大王を倒すべく旅に出る勇者達。勇者が大王を倒した後は平和が訪れる。幼少期、私が育った頃に大王は存在しなかった。でも、大王は復活した。そして、その大王を倒すために旅に出たトオル。そして、トオルは大王を倒した。そして束の間の平和が訪れた。そして、また新たな大王が誕生した。それがトオルだと。
「大王は倒しても暫くすれば生き返る。…いや、生き返るというより、新たな大王が生まれると言った方が正しいか。大王を倒した勇者が次の大王になるんだ。そして、その勇者の存在を人間は忘れる。そして新たな勇者が大王を倒すために旅に出る。その繰り返しだ。」
「そんなのおかしいよ!なんで?なんでなの!?なんで大王を倒した勇者が次の大王にならなきゃいけないの!?」
そんなのあまりにも理不尽だ。束の間の平和の為に、あんなにも過酷な旅を続けていたというの?そんなの酷いよ。
「ねえ、トビオとハジメは!?どこにいるの!?」
「さあ?アイツらは最後の戦いの生き残り。その後は知らねえよ。」
トビオとハジメは生きてる。その言葉にホッとした。けど、またすぐ疑問が浮かぶ。
「ねえ、クロとキヨコちゃんも死んだのよね?じゃあ、なんで、」
「オイカワが俺らに新しい命を与えてくれた。俺らはもう人間じゃない。魔族だよ。」
最後の戦いで命を落としたクロとキヨコちゃん。その二人が新たに命を与えられ生き返り魔族になったというなら、私も────魔族。そっと、頭に手を伸ばすと、以前はなかったそれ。トオルやクロ、キヨコちゃんの頭にあるそれと同じ。魔族の象徴。────角だ。
「違う!私は人間!魔族じゃない!人間だよ!」
その私の叫び声に反応して、背中から大きな翼が生えた。嫌だ、嫌だ、こんなの違う。飛び方なんて分からない筈なのに、私の身体は宙を浮き、そのまま窓から外へ飛び出した。
「ハルカちゃん!」
「キヨコちゃん、放っておこう。ハルカちゃんはずっと眠ってたんだ。混乱するのも無理はない。」
「でも…!」