第38章 【甘】プレゼントは私/影山飛雄
そう思ってたのに、一足先に部活が終わった飛雄が青城に来てしまった。
「…ちわっス。」
「お…疲れさま。」
どうしよう。私、プレゼントまだ買ってない。
「えっと…飛雄、お誕生日おめでとう。」
「あざっす。」
これから飛雄と二人で買い物に行くか…?いや、でもそれじゃあまるで私が飛雄の誕生日を忘れててプレゼント準備してなかったみたいじゃん。いや、まあ実際プレゼントは準備してないんだけどさ。
「飛雄…あのさ、誕生日プレゼント。」
準備してない。なんて言えるわけもなく、ここで昨日の及川さんの言葉が頭を過ぎった。
「…私、って事でもいいですか?」
鳩が豆鉄砲をくらったとは正にこの事だ。私の口からそんな台詞が飛び出すと思っていなかったであろう飛雄は何の言葉も発する事なく私を見ている。…やってしまった。小っ恥ずかしくてそんな台詞誰が言えるかと思ってたのに、言ってしまった。そして後悔。なーんてね、冗談だよ、驚いた?なんておちゃらけようと思ったが、飛雄は冗談も真に受けるし、冗談と言ったところであまり意味はないんじゃないかと思った。
「マジっすか!?スゲー嬉しいです。」
飛雄だって私と同じく恋愛経験値0の筈なのに、返ってきた返答は思いもよらないものだった。てっきり意味が分からず首を傾げるか、顔を真っ赤にして照れるのどちらかかと思ったのに、まさか喜ばれるとは。
「俺ん家、今日両親帰り遅いんで、来ませんか?」
「いや、でも、早くない…かな?」
「そうっすか?こういうのは早いうちからの方がいいと思うんすけど。逢崎さん明日も朝から部活っすよね?」
まだキスはおろか、手も繋いでないのに、その先を早く済ませた方がいいと言う飛雄。こういうのに疎そうなのに、やっぱりちゃんと男の子なんだな。
「でも、私、初めてだし…。」
「俺もです。でも、初めてだからこそ、逢崎さんと一緒がいいと思ってたんすけど。」