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【WJ】短編

第30章 【甘】言葉の真意/岩泉一


 進学校としても有名な青城は図書室に各大学の過去問や参考書の貸出も行っており、この時期ともなるとその貸出が激しく、本の整理も大変だ。大変っていうのは量もそうだけど、一冊一冊が分厚くて重たいのに、それらが並ぶ棚は脚立を使わなきゃいけない高さの位置に並んでいるからだ。背が高ければ脚立なんて必要ないんだろうけど、私の身長じゃ脚立なしでは届かない。自分の身長の低さを恨みながら、脚立の上り下りを繰り返し本の整理をしていると、


「一人でやんの大変じゃねえ?」


 不意にかけられた言葉に驚き、バランスを崩した私は、岩泉さんに抱きとめられた。


「うわあ!す、すみません!」
「いや、俺の方こそ急に声掛けて悪かったな。」


 慌てて岩泉さんから離れるが、思いもよらぬ出来事に岩泉さんの顔が見れない。


「これ、全部ここになおせばいいのか?」


 そう言って重たい参考書達を抱えた岩泉さんは脚立に上らず、そのまま本を一番上の棚へと並べていってくれた。


「や、あ、わ、すみません手伝わせてしまって…!勉強の邪魔してしまってすみません!」
「俺がやりたくてやってんだから気にすんな。」


 そう言って頭に置かれた手が、なんだかこしょぶったくて、恥ずかしくて、それ以上言葉を発する事が出来なかった。


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