第26章 【甘】その距離、0cm/瀬見英太
部活に行くと、いつもより少しだけ遅れてやってきた瀬見さんの腕には、ポッキーやプリッツが大量に抱えられていて、持っていた手提げ袋からも様々な味のそれらが顔を出していた。今日はポッキー&プリッツの日ではあるけれど、何故そんなにも瀬見さんがお菓子を抱えているのか。折角の記念日だから、皆に差し入れかな?なんて思っていたら、天童さんが瀬見さんの方へと歩いて行った。そして、天童さんはポケットから取り出したポッキーを瀬見さんの腕に抱えられたそれらの上に乗せた。そして、それに続くように他の先輩達もポケットからポッキーやプリッツを取り出し、天童さんと同じ行動を取った。あの牛島さんでさえ、それに参加してるのだから驚いた。
「五色君、あれ何?どういうこと?なんで?」
近くにいた同級生である五色君にそう尋ねるが、彼も私と同じく首を傾げ、先輩達の行動を見る事しか出来なかった。
「あれー?工と遥香は英太君にあげないのー?誕生日プレゼント。」
「え?瀬見さん今日誕生日なんですか!?」
「毎年英太君の誕生日にこれをあげるのがうちの決まりだよ。」
今日、ポッキー&プリッツの日。そのイベント事に乗っかって買ったポッキーはクラスで食べてしまい、手持ちのポッキーは底を尽きている。
「わ、私今すぐ買ってきます!」
「いや、いいって。これ以上貰ったって処理困るし。」
そう言って困った表情を浮かべる瀬見さん。ていうか、そういう決まりがあるなら天童さんも前もって教えてくれたら良かったのに…!
「そんで、英太君に誕生日プレゼントを用意してなかった工と遥香は英太君とポッキーゲームをやってもらいまーす!」
「「はあ!?」」
ポッキーゲームって、あれでしょ?ポッキーの端と端を咥えて食べ進めていく、合コンとかであるアレ。いやいやいやいや無い無い!そんなの恥ずかし過ぎる!絶対無理!
「因みに若利君は一昨年やったよ。去年は賢二郎と太一もやったしね。」
うわあ…嘘でしょ。長身の男同志、ポッキーゲームをやる先輩達の姿を思い浮かべたが、上手く想像出来なかった。