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【WJ】短編

第20章 【切甘】重なる鼓動/孤爪研磨


 きっかけは、本当に些細な事で、今となってみれば完全に私の方が悪かった気もする。元の原因は研磨だけど、その後の私の取った行動が悪かった。
 研磨はゲームが大好きで、デート中研磨がゲームに夢中になるなんてしょっちゅうで、研磨と一緒にいれるなら、なんて思っていた私は何処へやら。その日は、部活で嫌な事があって、どうしても研磨に構って欲しくて、甘やかして欲しくて、約束した訳でもないけど、研磨の部屋に上がり込んだ。嫌な顔をしながらも研磨は部屋に入れてくれた。そこまでは良かった。けど、最近発売したゲームに夢中だった研磨は、私が話しかけても、適当な返事ばかり。いつも通りと言えばいつも通り。でも私はその日それが不満でたまらなかった。ゲームに夢中な研磨に構って欲しくて、ゲーム機を手にした研磨の後ろから体当たりに近い勢いで後ろから研磨に抱き着くと、持っていたゲーム機がガシャンと音をたてて床に落ちた。そして、ゲーム機を落としただけだったんだけど、そのゲーム機を落とした事でゲームのデータが全部消えてしまったのだ。折角コツコツとやってきたプレイデータが抹消されてしまったことに研磨は凄く不機嫌になって、文句こそは口にしなかったけど、目が、目がね、普段私を見る目じゃなくて、研磨の完璧なトスにリエーフ君がスパイクミスった時の目。あ、やっちゃったって思ったのに、謝らなきゃって思ったのに、口から出てきた言葉は謝罪の言葉なんかじゃなくて、


「研磨がゲームばっかりしてるからいけないんだよ。研磨と一緒にいてもゲームばっかでつまんない。」


 半分本音ではあったけど、そんな事口にするつもりは無かったのに。
 研磨の顔を見るのが怖くて、私はその台詞を吐き捨て研磨の部屋を出た。


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