第8章 どうか無いものねだりでも
〜一松side〜
「一松くんを下さい」
やらしい吐息の中、上も下もぐちゃぐちゃにしてオレを待つ透にかける言葉が見つからない。
この行為が同意の元で行われているのか不安になるほど、ぐちゃぐちゃな透。
ああ、そういえば初めての時も透は泣いていた。
この行為が透の中で優しい思い出に残りますように...。
祈るように、願うように、透の中に初めて入った日を思い出す。
処女膜の破裂に涙を流す透が、痛くないと嘘をついたこの子が、どうしようもなく好きだと思った。
中学生でそんな事をするのは、いけない事だとも頭ではわかっていたのに、オレは透が欲しくて欲しくて、明日と約束するには早過ぎたのに、無いものをねだったんだ。
遠い記憶なのに色鮮やかに残っているそれは、大人になっても色褪せることは無かった。
上、下、右、左、透の腟内全部に触れる。
漏れる愛液も、吸い付いてくる肉壁も、苦しそうにむせび泣く顔も、全部全部愛しくてたまらない。
言葉には出さない。
好きだよって言えないオレができる事は、行動で示すだけ。
焦らさないでって透はそう口にするけれど、焦らしてる訳じゃない。
わかんないでしょ?
ボクがどれだけあんたを好きだなんて...。
ザラザラで柔らかい中だけはオレがどれだけ透を思っているかわかっているとでもいいたいかのように、きゅうきゅうと絡みついてくる。
本人より身体の方がよっぽどわかってるだなんて思ってたら、弱々しくも行為を止めるように透の手がのびてくる。
快楽の中に不安げな表情をみせながら、いやだっただなんてそんな的外れな事をいうものだから言葉をすぐに返す。
余裕なんて最初からないから慣らしてあげようと思ったのに、本当に昔から変わらない。煽るのが上手い。
「なんで...あっ、いれてくれな、あっん...んんんっ!いれ...て?」
こんな関係はいけないことだろうと頭ではわかっているのに、透のその一言がいとも簡単に理性を奪っていく。