白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第5章 歪みに飲まれる愛
泣いて俺の胸を叩くナナの声を
黙って聞いていた
何度も抱き締めたくなるのを
必死に堪えて
小さく相槌を繰り返した
平行線なやり取りに疲れたのか
ナナは泣くのを止めて
「…別れるなら
徹からチャント振って」
聞こえるか聞こえないかくらいの声で
俺に言葉を届ける
「でも…それじゃナナが…」
勝手な心変わり
勝手な別れのケジメは
ナナに嫌われて
自分が振られる事だ
そう思ってたのに
「良いから
私はまだ好きだから
ウソでも別れるなんて
言いたくない」
ナナは絶対に
自分からは嫌だと退かない
「…分かった。
ナナ…俺と別れて…欲しい」
口に出した言葉に
ズキズキと胸が痛んで
「…分かった…サヨナラ…」
声と全く合わない
ナナの顔に
息が出来なくなる程
苦しくなる
「ごめん、ナナ…」
「謝らないで
仕返しなら…済んだ、から」
「どういう事?」
涙顔を必死に変えるナナに
目を向ける