第31章 黒猫の説教と極悪妖怪
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「バッキバキ〜に折〜れ♪何を?心をダヨ〜♪」
土曜日の夕方の繁華街。
人通りも多いこの時間に1人、声をあげて歌いながら歩く男がいた
白鳥沢組のくせに和服が嫌いで、白いジャケットに紫のシャツというホスト顔負けの姿をしている
そしてその後をつけている男は、川西太一。
白鳥沢組の組員で主に潜入や捜査担当だった。高い身長を陰に隠しターゲットとなる者を逃さない観察力を持つと牛島から信頼を買っていた
それゆえ、白鳥沢の害になり得る天童の尾行をして行動を探れと命令されたのだ
「粉々〜に砕け♪何をォ〜?」
道の真ん中でクルクル回りながら、天童は歩いていた
しかし突然方向転換をして繁華街から外れて路地裏に入っていった
川西は天童の突然の行動に少し戸惑うが、すぐに彼を追った。
天童が入っていった路地裏は、猫が好みそうな細い道。川西はその道を掻い潜り路地裏の奥にたどり着いた。
その先には、潰れた工場が建っていた。衣類の修理工場のようだが、その入り口には《keep out》の黄色いテープが貼られていた
川西は、天童が工場に入ったと思いテープの下を通り工場に入った
工場内は埃や砂が舞っていて息苦しさを感じた。中に入り、辺りを見るが天童の姿がない
読みがはずれたと思い、川西は工場を出ようとした。
しかし、突然工場中に歌が響いた
「粉々〜に砕け♪何をォ〜?」
「太一を…だよ♡」