第29章 大事な人
病院を出て、タクシー乗り場に向かった。黒尾さんには華夜の分のお金も貰っていたから先に華夜に乗ってもらった。
「じゃあ夜琉、来週からの夏期講習頑張ろうね~」
『うぃ~…』
夏期講習のことを思うと気が重かったけど、あたしは軽く返事をしておいた。
「夜琉…、頼むから無茶だけはしないでね?」
『…うん』
「じゃあね。頑張ってね」
そう言ってタクシーが走り出して華夜は帰って行った。
時間は今は14:48。ケータイを見ると黒尾さんからメールが入っていた。
〈あんま遅くなるんじゃねえぞ?帰ったら飯4合炊いといてくれ。〉
だった。もうカレカノというより夫婦の会話だ・・・って思ってしまった自分が恥ずかしい。
それよりあたしは、この先のことを考えた。岩泉さんには会えなかったし、及川さんと話そうにも下手に会ったら殺されそうだし・・・
しばらく波風立てずに過ごそうかなと思ってタクシーを待った。
でも、タクシーより先に予想外の人に会った。
「夜琉さん、見つけましたよ」
『・・・?』
声のする方を見ると、そこにはひさしぶりに見た顔だった。ツンとした表情になんか怒っていそうな目つきに綺麗な前髪をしたクリームっぽい髪の人
「ちょっといいですか?」
『…白布…さん?』