第42章 ほんの些細な日常も
藍那がのろけ話を聞かせろー!と叫んでいると、私のケータイが着信音を鳴らす。
どうやら電話のようだ。今電話をかけてくるのは一人しかいない。
「もしもし、日代君?」
「ああ、お前の学校の校門のところにいる。今からこれるか?」
「うん!すぐ行くね!」
そう言って電話を切ると、二人がにやにやしながら私を見ている。
「噂をすれば…だね。」
由梨花が窓の外を見る。
「やっぱり心春そうとう日代君に惚れてるんだね。電話出たときの声とか表情とかもう…。乙女そのものだわ。」
「やめてよ、恥ずかしいから…!」
思わず力一杯藍那の肩を叩いてしまう。
「おー、照れてる照れてる。じゃあ愛しの心春の彼も待ってることだし、行こうか。」
私達は立ちあがり、教室を出る。
そう、今日が日代君と一緒に帰る日。
一緒に帰る日がいつも楽しみでしょうがない。
前にも言った通り、週に2回という貴重な機会だから、いつもこの日が待ち遠しい。
「そうだ。日代君に会ったら抱きつきに行ったら?今まで以上にラブラブできるチャンスだよ?」
藍那は懲りずにそんなことを言ってくる。
「うーん…。その勇気がわいてこない…。」
でも日代君に抱き締めて欲しいとか、キスして欲しいと思うのは少なくない。
ただいつも言えなくて、日代君と会った日に家に帰っていっつも後悔する。
「大丈夫だって!日代君だって抱きついて欲しいって思ってるよ。」
「そういうもの?」
「そういうもの!」
藍那が自信たっぷりな様子で答えた。