Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第3章 高嶺の花だとしても《岩泉 一》
目を丸くする蒼井。そりゃそうだ。俺だって急にコクられたらこうなる。でも、それでも伝えたかったんだ。好きだ、ってこと。
しばらく呆然とする蒼井だったが、状況を理解したのかぶわぁっと顔が赤くなる。
『え、わ、たし?』
「おう」
『あのっ、告白とかっ初めてで、なんて言ったら良いか、分かんない、けど』
次の一言。それで、決まる。
手がじっとりと気持ち悪い汗をかく。早く終わってくれ。頼む…っ!
『よろしく、お願いします…』
「は…?」
今度は俺が間抜けな声を出した。蒼井がペコリと頭を下げている。顔を上げると、口を開いた。
『つまりその、私も岩泉君が好きです…///』
うあぁぁぁハズいぃぃぃ!と頭を抱えてうずくまる蒼井。いつも見ないから新鮮で、ずいぶん可愛く見えた。
「付き合うっつーことで良い、のか?」
『うん。初めてだし色々だと思うけど、岩泉君、よろしくお願いします!』
ニコッと笑う彼女が可愛くて、思わず抱きしめていた。フワリと香る優しい香り。抱きしめた体は細くて、華奢で、男の俺とは違うんだって思った。
「大事に、するからな」
『うん。あのね』
「ん?」
『名前で、呼んで良い、かな?』
「おう」
『………は、じめ…///』
「何だ、海宙?」
『なんでそんなに普通に言えるの!?』
「分かんね」
きゅ、と背中が引っ張られる感覚。彼女が手を回して、制服を引っ張っていた。
「海宙」
『何、はじめ君?』
「大好きだ」
『ふふ、私も、だよ…』
そしてどちらからともなく距離が近付く。
2人の距離は
―――0㎝
俺は高嶺の花に、恋をした。
それは叶わない恋なんかじゃなくて
新しい毎日の始まりなんだってこと、
君が、教えてくれた。
俺を選んでくれて、ありがとう。
きっと、幸せにしてみせる。
彼女の柔らかい唇を感じながら、俺は一時の幸せに酔いしれていた。
END.