第5章 背の高い彼
そのときだった。
「おいっ」
その人はビクリとしてパッと私から離れた。
私は声のする方に顔を向ける。
「シド…!!あれ、公務は?」
「少しだけ抜けてきた。」
私の返答もそこそこに、
シドの目線は私の後ろに向けられていた。
「ジャス!!」
「えっ!」
私は振り向くと、そこにはジャスがいた。
シドがジャスに近づく。
ジャスは気まずそうに顔を背けていた。
「あの格好になっていいのは
俺とチェスやるときだけって言っただろ。
しかもアヤセのこと
押し倒すとはいい根性してんな?」
「まっ待って、ここまで
荷物持ったりしてくれたの。
だから責めないで!」
ムッとした顔で見下ろされた。
「ったく、アヤセに免じて
今回だけは許してやる。」
そう言うとシドもリースのお墓に向かい目を閉じる。
「よし、行くぞ。」
「シド…」
「何だよ。」
「来てくれてよかった。」
「…まぁな。
あいつの命日にここ来ないなんて
なんか気持ち悪くてな。
夜中に出てきそうだ。」
「そんなことないよ。」
私は笑いながら話す。
ジャスは私の隣で嬉しそうに歩いてる。
「ジャスだって嬉しかったよね。
シドが来てくれて。」
「ワン!!」
答えるように吠える。
晴れて気持ちのいい風が私たちを包んでいた。
~おわり♪~