• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕


何も答えずに視線を逸らして黙っていると、舌打ちが聞こえた。

「んだよ、まだ怒ってるのかよ? 」

あんなことされれば、誰でも怒る。

普段、どれだけこっちが我慢をしてるか、少しはわかればいい。

体を背け、一向に何も答えようとしないハイリアの肩に、ジュダルは後ろから腕を絡めてのしかかってきた。

「もろに入ったもんな、そんなに痛かったか? 」

まるでご機嫌伺いしているような優しげな声で、ジュダルは言ってきた。

肩を抱き寄せて、優しいような振る舞いをしてきたって、今日は許さない。

いつもこういう一時の態度に誤魔化されて、どこかでこちらが折れてしまうからいけないのだ。

甘い考えはもうよそうと思う。結局、反省させなければ意味がないのだから。

「そんなに怒るなよ、ハイリア。ほら、赤くなってねぇし大丈夫だよ」

ほとんど見もしないで額に手を当てて触れてきたジュダルの手を、無言で掴んで振り払った。

こちらを横から覗き込もうとしてくるジュダルから顔を背け、視線をそらす。

「めんどくせぇ奴だな……。悪かった。これでいいか? 」

軽々しく言ったジュダルの言葉には、当然感情なんてこもっていない。そもそも謝る気がみられない。

素直に「ぶつけて悪かった」という一言が、なぜこの男は言えないのだろうか。

「なぁ、あいつに何か言われたりしてねーよな? 」

そんな心配そうな声で質問してきたって、ちゃんと謝るまで返すつもりはない。

「まだ無視するのか? おまえも強情な奴だな……」

ジュダルのため息が首筋に当たった。

「そんなに口がきけないなら、声を出したくなるようにしてやるよ」

耳元で言われ、息が当たるくすぐったさに背筋がぞくりとした。
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp