第21章 探偵、美術館へ行く/沖矢、コナン
「コナンくん、トイレ逆だよ!?」
トイレ行ってくる!と言って駆け出した背中に声をかけるが、彼にそれは届かなかったようでどんどん走っていく。
しっかりしているとは言え彼はまだ小学一年生だ。迷ったら大変、と後を追いかける。
しかし少し行ったところで見失ってしまった。
立ち止まってキョロキョロと辺りを見回すが小柄な少年の姿は見つからない。
諦めて元いたところで戻ってくるのを待っていようかと踵を返した時だった。
「何だよ蘭、今取り込み中…」
知った名前が耳に入って来て振り向いた。
声は階段の方から聞こえてくる。つい好奇心から声の主が見える位置に移動する。
そこで自分の目と耳を疑った。
左手に携帯電話を持って、右手は襟元に着けていた蝶ネクタイを掴んでいるコナンくん。
先ほど聞こえた声は知らない人のものだったが、その声が今のコナンくんから聞こえてくる。
話している口調もコナンくんのそれではない。
どういうこと…?コナンくんは一体何者なの?混乱しながら数歩後ずさる。
後ずさったはいいものの、背中にトンと何か当たる感覚があった。
「人の電話を盗み聞きとは、あまりいい趣味とは言えませんね。」
振り返るとそこに居たのは昴さんで。どうやら後ずさった時に、立ち止まっていた昴さんにぶつかってしまったらしい。