第27章 FBIとの攻防/黒の組織
ここに残っていろ、と言い残してジンとウォッカは車のドアを閉めた。
同時、ベンツのドアが開いて3つの人影が降り立つ。
あれがFBI、なのだろうか。
2人に気づかれないように少しだけ窓を開けた。
これで会話は聞こえてくる。
「たった3人で来るとは、俺達も随分とナメられたもんだな。」
先に口を開いたのはジンだった。
「悪いが今日は君に用事があるわけではないのだよ。その車の中にいる彼女と話がしたいのだが。」
ちらりと初老の男性がこちらに視線を寄越す。
なんとなく目を合わせてはいけないような気がして思わず目を伏せた。
「何の用だ?俺が代わりに伝えてやるよ。」
「ほぉ、そこまで彼女が大事かね?」
「お前には関係のないことだ。」
ジンを取り巻く空気がいつも以上に殺伐としている。
左手がポケットの中で僅かに動くのが見えた。ああ、出来れば私の目の前で人殺しは勘弁していただきたい。
トントン、と車の窓ガラスがノックされた。
あちらに意識をやり過ぎていたなと後悔したがもう遅い。
音の方を振り向くと眼鏡をかけたブロンドの女性。
外に出なさい、と顎で示される。
ジンかウォッカに助けを求めたかったが、向こうも取り込み中のようだ。この状況で声をかけるのは流石に気がひける。
再び窓ガラスが叩かれる。
周りをざっと見渡すが、彼女の他にはジンと話している男性とその傍にいるガタイのいい男性だけのようだ。
こちらにはウォッカもいるし3対3。最悪の展開でも何とかなるだろう。
そっとドアを開けて足を地面につける。
「手を挙げて。」
車のドアを閉めるなり、鋭い声が飛んできた。
その声に振り向いたジンと一瞬目が合う。何か言うように口が動いたが、聞き取ることはできなかった。