第25章 太陽の欠片盗難事件/キッド
「知ってっか?紐の結び方って意外と癖が出るもんなんだぜ。さくらさんは無意識のうちに外科結びしてたんだろうな。」
思わず自分の靴紐を見る。仕事中に解けては面倒だからといつも固結びにしていたはずだ。言われてみればこれは手術で使う結び方だったかもしれない。
キッドはガシガシと頭を掻いた。
「はー靴紐ね。普通の固結びじゃなかったんだなアレ。すげーな、オメーそんなところよく気付いたな。」
コナンくんは鼻で笑うと、足元の方がよく見えるもんでね、と自嘲気味に呟いた。
「なるほどなー。」
キッドはコナンくんに背を向ける。
そして白衣のポケットを探ると何かを取り出した。
月の光に照らされてキラリと光ったそれは先ほどまでロビーにあったはずの太陽の欠片だ。
しばらく光にかざすような仕草を見せてから、彼はそれを再びポケットにしまった。
「オメーはさくらさんのことを電話で呼び出して、どっかの部屋に眠らせるか監禁するかしたんだろ?そして何食わぬ顔で入れ替わって俺たちの前に姿を現わすと、時間通りに太陽の欠片を盗んだってわけだ。」
「へえ?じゃあ名探偵には俺がどうやってあの警備の中、絵からコイツを盗ったのかってのも分かってんのか?」
「ああ、下見に来た時にでも太陽の欠片が絵から外れやすいように細工をしておいて、時間になって電気が消えたらみんなが慌ててるうちにこっそり盗ったんだ。トリックなんて使ってねーんだろ?」
ジリジリとコナンくんがキッドとの距離を詰めていく。
「窓を開けたのもオメーだ。この病院は気圧も一定に保たれてるみてーだからな。窓をいきなり開ければ風が吹き込む。みんなの気を引くためだろ?」