第23章 予定外のデート/沖矢
「本当にありがとうございました。」
結局昴さんは会議室まで荷物を運び込み、机や椅子を並べて会場のセッティングまで手伝ってくれた。
「いえ、貴重な体験が出来ましたよ。学会の準備なんて、一般人が経験することまずありませんからね。」
「1人だったらどれほど時間がかかっていたか…。もしこの後お暇なら1階のカフェでお茶でもいかがですか?お礼にご馳走させて下さい。」
深々と頭を下げると、昴さんは慌てて首を振った。
「本当に気にしないで下さい。」
「でもそういうわけには!」
ここまでさせておいてただで返すわけにはいかない。なおも食い下がると、昴さんは顎に手を当てて考えるそぶりを見せた。
「では、もしさくらさんもお時間あるようなら家に来ませんか?最近良いコーヒー豆を頂きまして。」
少し話したいこともあったんです、と言われれば頷く他なかった。
◻︎
昴さんはわざわざ駅まで車で来ていたようだった。
駅の裏のコインパーキングへ案内されると、見覚えのある車が駐められている。
「どうも乗り換えの多い電車は性に合わなくて。車なら買い物をした後の荷物も気にならないですしね。」
「そうですよね、私も車買おっかなぁ。あのマンション、1台分駐車場も付いてるんですよね。今は友人が来た時にしか使われてないんですけど。」
それは勿体無いですねえ、と昴さんはシフトノブをカコンと動かした。