第13章 竜王申し
ただ、そこに突っ立って俺のこと見てる。
目を合わせたら最後だった。
目線を外すことができない。
得体の知れない怖さ。
こいつの心臓はどこにある。
ほんの半歩踏み出せば肩に触れることができる。
なのに、足を前に出すことができない。
「なんでここにいるの……?」
かすれた声
独特のリズム
明らかに俺に向かって発せられた言葉だった。
「誰か……教えたの…?」
なんの表情もない。
なのにその存在は俺の中に強引に押し入ってくる。
成田の右手が伸びてきた。
革手袋の手が俺の頬を撫でていった。
その瞬間、少しだけ成田は笑うと俺に背を向けて歩き出した。
暫く、動けなかった。
遠くなっていくトレンチコートの後ろ姿から目が離せなかった。
姿が見えなくなった瞬間、膝から崩れ落ちた。
「大丈夫ですか!?」
空港の職員が走り寄ってくる。
冷や汗が止まらない。
なんなんだあいつ…
両脇を抱えられてなんとか立ちあがった。
「歩けますか?ベンチに座りますか?」
いろいろな問いかけを振り払って俺は駐車場へ足を向けた。
周りを見ている余裕なんてなかった。
ただ、逃げたかった。
車に辿り着いた途端、そのボディーに凭れて暫く動けなかった。