第5章 猫王子とテスト
そのまま歩き続け、部活もやっていない今の時間、人がいなさそうな音楽室へと辿り着いた。
奈央「ほんで、どないしたん?」
「…僕は可笑しいんだ。の傍にいるとドキドキしたりイライラしたり、だけど隣にいれば安心したり。この間なんて指先が触れただけで電気が走ったようになって、心拍数が上がった…昔はそんな事無かったのにだ。
だから僕はから離れた。自分でも分からないモヤモヤした気持ちのままに関わりたくなかった。変な事を言ってしまいそうで怖かったから無視した。初めはいつものバカで元気な声を聞くだけで十分だったんだが…話したいのに話せない」
奈央「…それはもう答え出てるんちゃう?」
「…それが出てないから僕は悩んでるんだ。教えてくれ!」
奈央「…本当は自分で気付くモンなんやけど、これ以上あんな見とられへんから言うわ。赤司君、アンタはの事好きなんや。もちろん異性としてな」
「…は?」
川崎の言っている事が分からなくて酷く間抜けな答えが出てしまった。
「冗談はやめてくれ。僕はと犬と王子との関係だ。犬に愛着は湧いても恋愛感情は持たない」
奈央「アンタらの関係には文句言わへんよ。せやけどそこだけで片付けようとしたらあかん。もう子供やない」
「…」
奈央「…球技大会の時、告白されたやん。あの時赤司君はどう思たん?」
「…イライラした。ポチとあの男では釣り合わないと思った。話してるのを見た時、ムカついた」
奈央「それ、世間ではやきもちって言うんや。赤司君はあの時も王子と犬で片付けようとしとったんやけどな。それに触れてドキドキするようになったのも、話したいと思たのも、全部好きになったからや。違う?」
川崎の言葉が頭の中で回る。そうだ。僕はが隣にいるだけで安心した。と話すのが楽しかった。何よりと一緒にいたかった。
「そうか…これが好きになるって事か…」
奈央「分かったらやる事あるんちゃうの?」
「!…すまない、恩にきるよ、川崎。今度好きな時に休日をプレゼントしよう」
奈央「ええの!?頑張ってきいや!」
川崎のエールを背中で受け、僕はある場所へと走った。